潜在層と顕在層、それぞれに刺さるコンテンツとは?
はじめに
ウェブを使った集客で成功するために大切なことの一つは、お客様のことをしっかり理解して、その人たちが欲しがっている情報を届けることです。お客様には大きく2つのタイプがあります。一つは「困っていることにまだ気づいていない人(潜在層)」、もう一つは「困っていることがはっきりしていて、解決方法を探している人(顕在層)」です。
この2つのタイプの人に同じような方法でアプローチしても、期待する結果は得られません。この記事では、それぞれのタイプの人がどんな気持ちでいて、どんな情報を求めているのかを詳しく説明し、本当に「心に響く」コンテンツとは何か、その基本的な考え方から具体的な方法まで、ウェブ担当になったばかりの方にも分かるように説明します。
1. 潜在層と顕在層とは何か
1-1. 潜在層と顕在層の定義と違い
潜在層とは、あなたの会社の商品やサービスを知らないだけでなく、自分が抱えている問題すら気づいていない、または気づいていても「これは解決できない仕方のないこと」だと思っている人たちのことです。
例えば、毎日残業が当たり前になっている会社の人が「うちの会社は忙しいから仕方ない」と思っているけれど、実は効率化できる方法があることを知らない状態です。
一方、顕在層とは、自分の抱えている問題をはっきりと分かっていて、その解決方法を具体的に探している人たちです。「業務を効率化するために、こんな機能がついたシステムを探している」というように、何が欲しいかがはっきりしています。
この2つの違いで最も大切なのは、問題に対する意識の深さと、自分から積極的に情報を探しているかどうかです。潜在層の人は、まだ問題に気づいていないので、偶然目にした情報から影響を受けることが多いです。顕在層の人は、具体的な解決方法を求めて積極的に情報を探し回っています。
1-2. 顧客の購買プロセスと層の関係性
お客様が商品やサービスを買うまでには、通常「認知→興味・関心→検討→決定」という段階があります。潜在層と顕在層は、この流れの異なる段階にいる人たちです。
最初の認知段階では、お客様はまだ自分の抱える問題に気づいていません。いろいろな情報に触れる中で、なんとなく「これって問題かも?」と感じ始めます。この段階の人たちが潜在層です。
次に、何かのきっかけで問題に気づき、解決したいと思い始めると、関連する情報を集め始めます。この段階は、潜在層から顕在層に変わる途中の状態です。
そして、具体的な解決方法を探し始める段階に入ると、いくつかの商品やサービスを比べて、自分に最も合うものを見つけようとします。この段階の人たちが顕在層です。
最終的に、比較検討した結果、購入を決定します。
このように、お客様が商品を買うまでの流れを段階的に理解し、それぞれの段階にいるお客様の気持ちや欲しがっている情報を深く理解することが、効果的なウェブマーケティングを行う上でとても重要です。
2. 潜在層に刺さるコンテンツの考え方
2-1. 潜在層が抱える課題と気づきの促し方
潜在層の人は、抱えている問題を「当たり前のこと」として受け止めていることが多いです。そのため、コンテンツを通じて「今のやり方が本当にベストなのか?」「見落としているだけで、もっと良い方法があるのでは?」という疑問を投げかけ、問題に気づいてもらうことが大切です。
例えば、営業を効率化する商品を扱っている会社なら、「多くの営業マンが知らずにやっている、時間がもったいない5つの習慣」というテーマでコンテンツを作ります。具体的な仕事の「あるある話」を示すことで、「そういえば、うちの会社でも同じことをしている!」と共感してもらい、自分の会社の問題に気づいてもらうきっかけを作ります。
この段階では、自社の商品を直接的にアピールするのは避け、客観的な事実やデータ、他社の事例などを紹介しながら、隠れている問題を明らかにすることに集中すべきです。お客様自身が「このままではダメだ」と感じることが、次のステップに進むための原動力になります。
2-2. 情報収集段階で有効なコンテンツの特徴
潜在層の人が問題に気づき、なんとなく情報を集め始めた段階では、幅広くて分かりやすく、いろいろな視点を提供するコンテンツが有効です。彼らはまだ具体的な解決方法をイメージできていないので、様々な情報に触れながら、自分の問題の本質や、どんな選択肢があるのかを理解しようとしています。
具体的には、以下のようなコンテンツが考えられます。
体系的な解説記事
業界の基本知識、関連する技術の流行、よくある問題とその背景などを、まとめて分かりやすく説明します。
多様な事例紹介
特定の商品に偏らず、「こんな問題をこんな方法で解決した事例」「業界全体の成功事例と失敗事例」のように、様々な角度からの事例を紹介し、お客様に自社の状況と比較してもらいます。
専門家インタビュー
業界の専門家や詳しい人の意見を紹介することで、客観的な視点を提供し、お客様の理解を深めます。
用語集・よくある質問
業界特有の専門用語や、お客様が抱きやすい疑問を丁寧に説明することで、情報収集の最初の段階での障壁を取り除きます。
これらのコンテンツを通じて、お客様が自分の問題をより深く理解し、解決方法の方向性を探るための基礎を作ることが重要です。
2-3. 信頼構築と課題提起によるニーズの醸成
潜在層へのアプローチでは、すぐに結果を求めるのではなく、長期的な視点で信頼関係を築き、少しずつニーズを育てていくという考え方が必要不可欠です。
まずは、お客様にとって価値のある情報を継続的に提供し、「この会社は、私たちの業界や問題について深く理解している」「この会社から得られる情報は信頼できる」という認識を育むことが大切です。一方的に情報を発信するだけでなく、お客様の疑問や反応に耳を傾け、双方向のやりとりを意識することも重要です。
信頼関係ができた段階で、お客様が潜在的に抱えている問題を、より具体的に、かつ感情に訴えかける形で提起します。「もしこのような問題を放置すると、将来的にこんな損失につながる可能性があります」「同業他社はすでにこのような対策を始めており、御社も早急な対応が必要です」といった具体的な問題提起は、お客様の危機感を呼び起こし、解決方法への関心を高めます。
このように、時間をかけて信頼を築き、お客様の状況に寄り添った問題提起を行うことで、潜在層の意識を変え、顕在層へと導くことができるのです。
3. 顕在層に刺さるコンテンツの考え方
3-1. 顕在層が求める情報と意思決定支援
顕在層の人は、具体的な問題を解決するための商品やサービスを探しているため、客観的なデータや根拠に基づいた、詳しくて比較できる情報を求めています。彼らは、費用対効果や導入後のリスク、将来的な発展性など、多角的な視点から商品やサービスを評価しようとしています。
彼らの疑問は、「この商品は本当に私たちの業務に合うのか?」「導入によって、具体的にどのような効果が数字で得られるのか?」「競合商品と比較して、長期的に見て最もメリットがあるのはどれか?」といった、より深く、具体的なものに変化しています。
3-2. 比較・検討フェーズに最適な訴求内容
顕在層の人が複数の商品やサービスを比較検討している段階では、自社の商品やサービスが、お客様の具体的な問題に対して、いかに最適な解決策を提供できるのかを、客観的な証拠とともに示す必要があります。
詳細な機能紹介と利用場面
単に機能を並べるだけでなく、「この機能は、このような問題を抱えるお客様のこんな業務を効率化します」といった具体的な利用シーンと効果を結びつけて説明します。
第三者機関による評価や受賞歴
客観的な評価機関による認証や、業界での受賞歴などで、商品やサービスの信頼性を高める強力な裏付けとなります。
詳細な導入事例と投資対効果
導入企業の具体的な問題、導入過程、そして導入によって得られた具体的な効果(コスト削減率、売上増加率など)を詳しく示し、投資対効果を明確に提示します。
競合商品との徹底比較
自社商品の強みだけでなく、あえて弱みや制約も開示し、どのようなお客様に最適なのかを明確にすることで、透明性と信頼性を高めます。
技術的な詳細情報(他システムとの連携、セキュリティ対策など)
特に企業向けビジネスでは重要な判断基準となります。詳しい技術情報を開示することで、技術担当者の疑問や不安を解消します。
これらの情報は、顕在層の人が複数の選択肢を比較検討し、自社にとって最適な商品やサービスを見極めるための重要な判断材料となります。
3-3. 契約を後押しする情報提供
最終的にお客様に契約してもらうためには、最後の不安を取り除き、具体的な行動を促すための情報提供が大切です。
個別対応や柔軟なプラン
お客様の個別のニーズに対応できるカスタマイズ性や、様々な規模や予算に合わせた料金プランを提示することで、導入のハードルを下げます。
手厚い導入サポート
導入時の設定支援、操作研修、運用開始後のサポート体制などを明確に提示し、導入への不安を解消します。
お客様成功事例の深掘り
単に導入事例を紹介するだけでなく、導入後の具体的な成果や、担当者の声などを詳しく伝えることで、お客様は自社での成功をより具体的にイメージできるようになります。
リスク軽減策の提示(返金保証、契約期間の柔軟性など)
導入に対するリスクを軽減するような条件を提示することで、お客様の意思決定を後押しします。
限定オファーや緊急性
期間限定の特典やキャンペーンなどを提示することで、お客様の購買意欲を高め、行動を促します。ただし、過度な煽りは信頼を損なう可能性があるため注意が必要です。
これらの情報提供を通じて、お客様の残された疑問や不安を解消し、安心して契約へと進めるように丁寧にサポートすることが重要です。
4. 層に応じた配信チャネルと接点の設計
4-1. 潜在層にリーチしやすいチャネルとは
潜在層の人は、まだ特定の情報を求めて積極的に行動しているわけではないため、広い範囲に情報が届きやすく、自然な流れで接触できるチャネル(情報発信の場所)が有効です。
SEO対策を施した質の高いブログコンテンツ
潜在的なニーズを持つキーワードで検索する人に対して、価値ある情報を提供し、認知を獲得します。単なるキーワード対策ではなく、深い洞察に基づいた質の高いコンテンツが重要です。
共感を生むSNSコンテンツ
ターゲット層が興味を持つであろう話題や視点を取り入れ、共感や議論を呼び起こすようなコンテンツを発信し、ブランドへの親近感を育みます。
啓発的なYouTube動画
問題提起や業界のトレンド解説など、視覚的に訴求力の高い動画コンテンツは、潜在層の興味を引きやすく、理解を深めるのに役立ちます。
業界関連のオンラインコミュニティやフォーラムへの参加
潜在層が集まる場所で、専門知識や意見を発信することで、認知度向上と信頼獲得につなげます。
インフルエンサーマーケティング
ターゲット層への影響力を持つインフルエンサーと連携し、商品やサービスの間接的な紹介や、関連するテーマでの情報発信を依頼します。
これらのチャネルを通じて、潜在層に「気づき」と「興味」を与え、次の段階へとつなげるための接点を作ります。
4-2. 顕在層とのタッチポイントの最適化
顕在層の人は、具体的な解決策を求めて積極的に情報を探しているため、彼らの検索行動や情報収集の動線上に、的確に情報を提供できるチャネルを整備することが重要です。
ニーズに特化したランディングページ
特定の問題やキーワードで流入してきた顕在層に対して、ピンポイントで解決策を提示するランディングページを用意します。
精度の高いリスティング広告・ディスプレイ広告
顕在層が検索するであろう具体的なキーワードや、関連性の高いウェブサイトに広告を掲載し、効率的にリーチします。
詳細な商品・サービス資料(PDFダウンロード形式など)
顕在層が比較検討に必要なスペック、機能、導入事例などをまとめた資料を提供します。
無料デモ・トライアルの提供と分かりやすい導線
商品やサービスを実際に体験してもらう機会を提供し、導入後のイメージを持ってもらいます。申し込みプロセスを簡単にすることも重要です。
個別相談・問い合わせの促進と迅速な対応
顕在層からの具体的な質問や相談に対して、専門知識を持った担当者が迅速かつ丁寧に対応することで、信頼感を育み、成約につなげます。
これらのタッチポイントを最適化することで、顕在層の検討段階における疑問や不安を解消し、スムーズに成約へと導くことができます。
5. 潜在層から顕在層へ導くマーケティング戦略
5-1. カスタマージャーニー全体を意識したコンテンツ配置
潜在層から顕在層へとお客様を育成していくためには、カスタマージャーニー(お客様が商品を知ってから購入するまでの流れ)全体を見渡し、各段階のお客様の気持ちと情報ニーズに合わせて、適切なコンテンツを戦略的に配置することが必要不可欠です。
単に各層向けのコンテンツを作るだけでなく、それらのコンテンツがどのように連携し、お客様を次の段階へと導くのかという「流れ」を設計する必要があります。例えば、潜在層向けの問題提起ブログ記事から、関連するお役立ち資料のダウンロードを促し、さらに顕在層向けの商品紹介ウェビナーへと誘導する、といったシナリオを描きます。
この全体設計においては、各コンテンツの目的(認知、興味喚起、検討促進など)を明確にし、お客様がスムーズに次のステップに進めるような導線設計が重要になります。
5-2. 各層への効果測定と改善サイクル
各層に向けた施策の効果を数値で測定し、データに基づいて戦略を継続的に改善していくことが、マーケティングの投資対効果を最大化する上で極めて重要です。
潜在層向けのコンテンツであれば、リーチ数、エンゲージメント率、ウェブサイトへの流入数、資料ダウンロード数などを測定します。顕在層向けのコンテンツであれば、問い合わせ数、無料トライアル申し込み数、商談数、成約数などを測定します。
これらのデータを分析し、どのコンテンツがどの段階のお客様に効果的なのか、どのチャネルが最も貢献しているのかなどを把握します。そして、その分析結果に基づいて、コンテンツの改善、配信チャネルの最適化、ターゲット設定の見直しなどを行い、効果測定と改善のサイクルを回し続けることが成功の鍵となります。
5-3. 一貫性あるコミュニケーションの重要性
潜在層から顕在層へとお客様が移行する過程で、ブランドイメージ、メッセージ、トーン(話し方の調子)など、あらゆるコミュニケーションにおいて一貫性を保つことが、お客様の信頼を獲得し、長期的な関係を築く上で必要不可欠です。
ウェブサイト、ブログ、SNS、メールマガジン、営業担当者のコミュニケーションなど、お客様が接するすべてのタッチポイントで、矛盾のない、一貫したメッセージを発信することで、お客様はブランドに対する安心感と信頼感を深めます。
また、一貫性のあるコミュニケーションは、ブランド認知度の向上にも貢献します。お客様は、繰り返し接触する一貫したメッセージを通じて、ブランドの価値観や強みをより深く理解し、記憶に定着させることができます。
まとめ
この記事では、潜在層と顕在層それぞれの心理的特徴と情報ニーズを深く掘り下げ、彼らに真に「心に響く」コンテンツの考え方、効果的な配信チャネル、そして両者をつなぐための戦略的なアプローチについて説明しました。
従業員50人以下の会社で、限られたリソースの中でウェブマーケティングを推進する場合、まず取り組むべきは「お客様の成功事例」を徹底的に深掘りし、多角的に発信することです。
その理由は、成功事例は潜在層にとって具体的な問題解決のイメージを与え、「もしかしたらうちでもできるかもしれない」という希望と行動への動機付けになるからです。単なる成功談ではなく、導入前の問題、導入過程での苦労や工夫、そして導入後の具体的な成果(数値データを含む)、担当者の生の声などを詳しく伝えることで、より深い共感を呼び、潜在層の問題意識を高めることができます。
一方、顕在層にとっては、自社と似たような問題を抱える企業の成功事例は、導入後のリスクや効果を具体的にイメージするための最も強力な判断材料となります。「あの会社で成功したなら、うちでもできるかもしれない」という安心感を与え、契約への後押しとなるでしょう。
お客様へのインタビュー、アンケート、データ分析などを通じて、質の高い成功事例を収集し、ウェブサイト、ブログ、動画、資料など、様々な形式で発信してください。そして、その成功事例を起点として、潜在層への認知拡大、顕在層への比較検討材料の提供、そして最終的な契約へとつなげるための導線を設計することが、限られたリソースで最大の効果を生み出すための、最も実践的かつ重要な戦略と言えるでしょう。
